技術革新のための“好異質性体質”作り         ヤルデア研究所 伊東義高    

How to increase“AlIEN-LlKING-PEOPLE”for technological innovation  名案は発想数に比例する。偶然によらず、目的的にヒット商品開発・技術開発をしようとするならば、まず「総 発想件数=発想機会×発想者数」を増やすこと、つまり底辺の拡大が大切である。  ついで集団発想を効率的にするためには、ユ二一クなオモロイ発想を得るための「拡散思考段階」と現実的・実 践的に技術的・経済的問題を解決する「収束思考段階」とを構造的・方式的に分離するとよい。天才なら一人です ることを凡人達は発想の分業で、WHATとHOWを考えるのである。  さらに思考の場の雰囲気設計で“ドーパミン支配のα波中心の安心気分”と‘ノルアドレナリン支配のβ波中心 の緊張気分”との割合を、拡散思考では約9対1に、収束思考では1対9にすることである。  底辺の拡大 創造は学歴や記憶力にはほとんど無関係とは企業経営者でも常識だが、一方で発想段階に質の概念 (出来る出来ない・売れる売れない)と管理の発想(費用対効果曲線の安定)を持ち込んで、○○開発室とか×× 研究所とかに集約化・専門化しているのが実態である。  そこでは「創造の専門家達」が朝から晩まで“調査・分析”と“発想・思考”とを繰り返す。作業密度の高さと 目的外発想の抑圧とから「良案が効率的に算出」されていると思われている。そして、改善提案制度や小集団活動 等での発想は所詮素人・凡人の知恵で低レベルで下らぬものと切り捨てられることが多い。  発想は@断片的な閃きや内容が曖味な絵空言・イメージであるヒント(WHATの始まり)、A発想の狙い・個性が 固まり内容が充実してきて図画や言語での説明に適するようになったアイデア(かなりのWHATと少しのH0W)、 B仕様書・設計図に近いほどに煮詰まったプラン(充実したH0W)へと発達する。  そして評価尺度もその発達段階応じて変わる。発想の新奇性を表すUniqueness(U0,U1,U2)と効用性を 示すEffectiveness(E0、E1、E2)との2項目で評価するとき、ヒントはU重視で(E0でもU2なら第一次合格)、 プランはUとEの両方重視で(U2/E2が名案、U1/E1が中案、U0/E0なら愚案。因みにU2/E1は奇案、 U2/E0は珍案、U1/E2は良案、U0/E2は堅案)である。アイデアはこれらの座標上で評価するとよい。  ヒント多産を旨とする拡散思考過程やヒントとアイデア混在の改善提案制度においてプランと同じ評価をするこ とで発想の発達を阻害している例が多い(早期収穫・投資効率を垂視する経営陣と不公平批判と結果責任の回避を 志向する事務局の無意識的避択による)。  成功報酬の賞金額は質を表す等級に幾何級数的に比例するのが道常である。そして「良いものを沢山提案せよ」 と無理強いする。多くの凡人は「どうせ自分には無理…」と諦め、口を閉じ、脳までも閉じてしまう。一つの試み として「品質賞」と別に「数量賞」を質と無関係に量に幾何級数的に比例する質金とともに大いなる名誉賞(ココ ロの報酬)の併設を提案する。  発想の分業 創造的思考とは素人でも参画できる拡散思考段階と玄人ならではの収束思考段階とで成り立ってい る。好ましくは、この両方は一人の脳の中で自由に、無意識に、相互交流的に試みられることてある。結果として その達人と思われる人に“天才”の称号が贈られる。  前者「rどんなものを作るのか、どのようなものにするのか」というWHAT型思考で、ほとんどが異質同士の結合 による新奇誕生という異質馴化、後者は「どのようにして実現するか、別の方法では駄目か」というHOW型思考で、 多くが手慣れた手段や手元の資源の中に有意差を見いだす点検・検証という馴質異化のタイプといえよう。  前者は「思い付き歓迎」「ユニークさが欲しい」といわれるヒント創出の段階であり、後者は「イメージを理論 化するための右脳から左脳への政権移管」であり「夢を現実化する手続き」のプラン確定の段階である。  商品開発室や技術研究所では選ばれた凡人連が天才の成果を求められ努力をしている。しかし、その努力のほと んどは「調査・確認・分析・評価」という左脳優先の論理的・デカルト主義的思考を効率的・管理的な組織・制度 の下になされている。つまり、収束思考を専門的に行っている集団である。そして「分析…論理…管理…専門…」 の反復・定着が拡散思考の障害を発想組織自身に内在化させるという矛盾をもたらしている。自分で自分の頭を堅 くする仕組みを作っておいて、柔らか発想を求めるのが大方の企業のようである。  一方、多くのマジメな凡入社員は生産・事務に従事して疲れている。決められたことを決められたようにするこ とでパラツキのない品質・原価・納期などが期待され効率と信頼が築かれる。  好きでないことを我慢してやることで脳は不協和を感じ、自律神経は乱れ心身症になる。ストレス病がサラリー マンの職業病となっている。  溜まったストレスを発散させるために、折角昼間稼いだ金をもって夜の巷に出てカラオケやパチンコに勤しむと いう勿体ない努力をする。昼間の我慢という抑圧力の反力がストレスとなって心身を破るのだが、その反力の方向 を洒や遊びに逸らすだけではなく、反力の反力(つまり、抑圧された元の欲求・願望の力)で解消しよう、毒を薬 にしようというのである。  不快とは不安と不満とからなる。不安とは殺される、傷つけられる、叱られる、恥ずかしい…からの逃避欲求で、 アドレナリンの分泌により血液が内臓から筋肉にシフトされるなどの非常時体制がとられる。不満とは自分の食料 や配偶者を奪われる、テリトリーを侵される、名誉を傷つけられる、羨ましい…への攻撃欲求でノルアドレナリン の分秘により、やはり内臓がないがしろにされる非常時体制となる。  快感とは不安や不満のないことではない。それは無不安や無不満であるに過ぎず、快感ではない。食う・寝る・ セツクスの充足、身を守る物・人・金…の獲得、身を立てる能力・評価・地位…の向上などへの接近・実現欲求で ドーパミンの分泌で心身が安心〜浮かれる動物本来のあらま欲しき姿である。  軽い不快感情は保身のために緊張・集中して的を外さない心身活動を促すもので、管理的業務や精緻な収束思考 に適する。軽い快感は自己拡張を試みる「乗り」「はしやぎ」である。あれやこれやの浮気・放逸に流れやすい面 もあり、芸術的活動や拡散思老に適する。  [拡散思考の場] 無批判が保証された楽しい雰囲気のもとで「思い付きだけで結構」「実現性は考えなくてよ い」…の申し合わせでのヒントの大量生産の場である。右脳主役の場である。  改善提案割度にもいろいろあるが、「ヒントのみでもOK」を加えることを提案する。素人の社員から直ぐに金 の成る木を求めるのは虫がよすぎる。開発の糸口が万に一つでもあれば大儲けである。「水に溶けるテレビ」「柔 らかなフライバン」「空飛ぶ灰皿」「お好みストーリー・ドラマ」…のような断片的な、イメージ的な言葉でもよ いし、塀の落書きのようなスケッチでもよいとして、表現上の制約を最低限にする。  管理職がヒント評価能力者とは限らない。頭の堅くなったオジサンよりも頭の未熟なヤングのほうが新しいもの を見つける感性をより持ち合わせていることが多い。  「今月のオモシロ提案」「奇抜ペストテン」とかを社内報で紹介してムードを盛り上げる。  アイデア・コンテストにもいろいろあるが、物の形までに仕上げないものも参加できる方式も付け加えることを 提案する。例えば「模造紙展」である。1枚の模造紙にヒントやアイデアを文字や図や絵でカラフルに思い思いに 書き込んだものを会議室・廊下・体育館などの壁に貼り出すのである。提案は個人でもグループでもよしとする。 技法重視の品質管理・原価低減中心型で今いき詰まっている小集団活動の活性化にも恰好のものであろう。  社員だけでなく取引先や一般来客あるいは招かれた家族にも見られるとよい。見た人は自分の好みで作品の下に 吊り下げられた紙袋の中に予め事務局から貰っている「人気投票券」(1人当たり1枚〜数枚)を入れる。いろい ろなヒトの投票でアイデア作品の審査をするのである。その裏での集票運動や会場での客引き・売り込みもあろう が一切お構なしとするのが面白い。拡散思考運動による拡散思考の拡散である。  非意図的着想や偶然の創造ではなく、経済的活動の一環として、目的的創造を企画するならば、拡散思考による ヒントの量的生産性を計ることてある。それには、脳内における「印象〜記憶〜連結〜想起〜比較」の仕組みを研 究し、応用することが有効であると思われる。一連のその仕組みの背景にある気分が大変に重要なことであると私 は考えている。  [記憶の構造] 動物は個と種の最適生存を計るために学習をする。個々の休験を自分にとって有利か不利か、 得か損か…つまり好きか嫌いかとの判定(大脳辺縁系の扁桃核が評価)をしつつ、次の同種体験に役立ちそうな印 象情報・処理情報を記録(辺縁系の海馬が主役)しておく。  大量の情報記録を体系や目次を前提として整理できるなら楽だが、何が次々と名乗り挙げてくるのか判らない脳 は似たもの同士のまとまり方式で収納蓄積をせざるを得ない。記憶の保持・想起および基本的対応を正確に迅速に するために、好き(+)と嫌い(−)とに色分けしている。扁桃核がプラス印象(快感)と評価すると脳幹の中脳 からドーパミンが分泌され、マイナス印象(不快)と評価するとアドレナリン(恐れ)やノルアドレナリン(怒り) が分泌され、前頭葉に流入される。  これらの分泌物は個々の神経細胞間(シナプス間隙)において授受される情報伝達物質であるとともに、シナプ ス連絡全体をコントロールする機能も持っていると見られている。私はこれを気分モードと考えている。  漢詩の平仄、音楽の長調・短調のように記憶に情動の色付けをする。交通信弓に赤と青の中間に黄色があるよう に、無情動の印象記憶用には多くの情報伝達物質や情報伝達モード制御物質(アセチルコリンやグルタミン酸など がそうか?)があって、机・紙や文字・数字等一般を扱っているが、生活・生存への関係度が低いだけに記憶や想 起に曖昧・混同・遅延などが多い。  経験中の刺激・印象は短期問(数秒間)は脳内の特定閉鎖回路を電流(Na−,K+のイオン化パルスの移動)が ループすることで保持される。その間に、過去に同種体験があるか否か、自分にとって重要か否かを判定し、記憶 するかしないかを決定する。  新種で重要ならば記憶寮の空き部居を使って独立の「一人部屋」を開設する。2〜3人の先輩がいるものは引き 取られて共に同好会を結成して「習慣○○」の表札を掲げる。既に何十人、何百人の大部屋がある場合は単に在籍 人数表の書き換えが行われるだけである。(中期記憶はシナプスの接続神経細胞で情報伝連物質を受け入れるレセ プターが燐酸化され変質・固定)  どの人の記憶寮でも寮生と部屋割りには通牲が見られる。小部屋では一人当りの床面積が広いために個々の動き が自由で寮生に個性があり、固有名詞で呼ばれる。部屋が大きくなるにつれて窮屈になり、個性は小さくなり、共 通の部屋名で呼ばれるようになる。(個別情報の類型化であり、イメージ化である。これは記憶素子としての神経 細胞数の節約であり、保持の正確化・想起の迅速化・対応の固定化につながる)  記憶は想起のためのものである。正確に迅速に寮生を呼び出せるように、部屋配置は大きく「文科系と体育系( 快感系と不快系)」とに二分し、似たもの同士が隣接・近接するように設計されている。時には他所の部屋の寮生 が遊びに来たり、泊まっていったりすることがある。仲の良い部屋同士では仕切壁を打ち抜いて行き来したり、大 同合併することもある。こうすることが寮の運営と寮生各人の幸福に役立っている。(同類イメージの近在性・接 近性・連合性または重合性が大脳前頭葉の行う思考活動、とりわけ創造的恩考に非常に重要なのである。連想・類 比などの思考はある概念の部分的要素を入れ替えても、なお基幹概念が保たれるお陰である。微小差異をもって異 質とせず、同類とする認識である。    [拡散的気分] 情動と共に記憶されたものが想起されるときに、その情動も想起されると考えられる。長調の 音階が流れると気分が明るく朗らかに(快感)なり、単調の音階が流れると暗く悲しく(不快)なるように、脳内 のムードが切り替えられる。(思い出し笑いや苦い思い出を避けることなどで知られている)  今ある楽しいことの想起によって脳内に快感気分が湧き出してきた(ドーパミンが分泌され出してきた)としよ う。そうすると想起された記憶と同種・同類(当然に快感系)の記憶群が連想により想起され易くなるとともに、 快感気分が更に高まってくる。論理的には異質でも、形態・色彩・触感・風味・構造・挙動・機能…などが主観的 に近似・類似していると思われ仕訳されていた記憶群が芋蔓式に想起される。  逆に、意識的に不快な記憶を想起した場合はこの様にはならないのが普通である。それは快感は好きだが不快は 嫌い、思い出したくない、抑圧したままで置きたいという心埋的ホメオスタシス(正常化機能)による。  ドーパミンは多動症(そわそわと落ち着きのない、あれやこれや浮気っぽい行動)の原因物質として疑われてい る。大脳前頭葉で多面検討しても行動は一つに絞られ、円滑に処理されるように大脳基底核が調節しているのがド ーパミンにより乱されるらしい。ドーパミンは更に大脳前頭葉に呼び出される中・長期記憶(大脳前頭葉や脳幹に 沈澱・刻み込まれているもの)の身元確認や通関審査の手を抜いて、無秩序入国をもたらすらしい。  軽度のドーパミン性興奮によって、類縁情報(理論的には異質・無関係)が多く想起され、テーマとの間で類比 発想されることは拡散思考では欠かせない条件である。加えて快感〜安心による緊張感の低下で、面白気分で非常 識発想が容認され易くなり、ヒントが多産される。 収束思考の品質と効率はノルアドレナリンが約束してくれる。しかし、長期単調の緊張は脳の機能発揮に好ましく ない。疲労による忌避感や不成功による無能力感が思考を萎縮させる。気分転換の休操も悪くはないが、脳の別の 部位を別に使うこともお勧めである。一口のケーキや一口の冗談で少しのドーパミンを意図的に誘導するのである。  アップル法 楽しい拡散思考をいろいろ研究・実験してみた。五感のうち嗅覚・聴覚・視覚を対象としてみた。 ラベンダーの香りは覚醒的にジャスミンの香りは鎮静的に働くと聞き、拡散思考と収束思考とに応用したが効果は 不明だった。ともに不馴れな臭いという気掛りがマイナスに働いたようだった。α波を導き出すとの定評のあるピ バルディやモーツアルトの器楽曲を拡散思考のBGMとして使ってみたが、宜伝文にあるような御利益は確認でき なかった。  グラピア誌やカラーパンフレットから名刺大の絵を切り出して類比発想のタネとして使ってみたら効果があった。 画材の避定には旨そう・奇麗・気持ち良さそう…なものとして多種多量用意した。これらを見ていて想起される様 ざまの快感系イメージとテーマとを類比によって異種結合するのである。楽しい気分、軽安の脳はユ二一クで、下 らないヒントを大量生産してくれる。ヌード写真のような軽いお色気ものや南国の楽園風景などは中脳の黒質を刺 激してドーパミンを微かに分泌させるようだ。  伊東開発の創造技法“アップル法”は絵(イメージカード)を使った「画像類比法」と多面思考をゲーム感覚で 展開する役割発想の「強制拡散法」との組み合わせによる二段拡散方式を特徴としている。収束思考も二段階方式 ではあるが個性度は低い。(拡散思考は業種・企業を超えて発想生産性を求められるが、収束思考は開発意図や技 術力などを背景に個別的に検討されるものだから、利用者が差し替えればよい)

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