楽しみながらヒントを多産するアツプル法         ヤルデア研究所 伊東義高      

APPLE法   (水平思考法・拡張思考法としての問題解決のための画像類比法)   (Analogy with Pictures for Problem-solving as Lateral thinking and Expand-thinking) 開発 ヤルデア研究所所長伊東義高 1985年 1.技法の概要 愚案の大量生産  一粒のダイヤモンドは一握りの±からは得られず、一山もの土の中から得られるものである。いま、何か良いプラン (そのまま実行できる案)を得ようとしたら、その約10倍ものアイデア(全体イメージをもつ、ある程度使えそうな 新案)が必要であり、そのためにはさらにその10倍のヒント(使えるかもしれない思い付きやヒラメキで、一般に断 片的だったり、漠然としたもの)が必要である。 ヒント=アイデア=プランということはまずない。発想技法とは「愚案」だらけのヒントを一般人が効率的かつ人間 的に生産するシステムであろう。  一方、世の創造のほとんどはテーマに関する解決欲求と関連情報が混然とした過飽和状態にある時に、偶然に遭遇す る身近な事象からのイメージとテーマの間において意識的または無意識的に行なわれる「類比」によって得られる異種 結合の結果のようである。  そこで、我々の記憶情報のほとんどを占める視覚情報=画像イメージに着目して、偶然に選ぶ画像からの個性的イメ ージとテーマとの間の類比によって異種結合的ヒントを楽しみながら大量生産しようとして画像類比法を考え、このヒ ントをさらに富化拡充するためにチェックリスト法的思考をグループ・ゲームに折り込んで強制拡散法(役割発想法) をつくり、次いでこれらのヒントをアイデアに結合・肉付けをしてシーズアップ・ニーズダウン法を付加して、アップ ル法を開発した。 スデツプの概要  事前準備として、テーマに関する理性情報・感性情報を広く収集して発想目標を鮮明にするとともに、興味関心をそ そり解決欲求を呼び起こし、解決レベルや期限の設定、さらにはグループ間の競争導入等によるインパクトで、脳の中 を創造的飽和状態に近付ける。  画像類比法は、「NM法T型」の「一語一義的な言葉からの類比」を「一画百情的な絵のイメージからの類比」に置 き代えて、豊富な潜在記憶を刺激して類比の個性化と数の拡大を図り、意外性のある異種結合のチヤンスを増やすとと もに「上手・下手」の不安や差恥心を除去するために個別発想によるカ一ド方式とした。 アップル法の基本ステップ 軽安な右脳中心のイメージ思考で、優等生でない人でもヒントを多産できる。「新奇でがつ実用的な案」は「実用的 ではあるが陳腐な案」からは発展しにくく、逆に「新奇ではあるが実用的でない案」から展開しやすいので、実用性の 検証は後のこととして、先ずユニークなヒントを玉石混交のまま発掘することを狙いとしている。 創造のHlP ・光るヒント…………ビカッ、ヒラメキ、思いつき。断片的、漠然としたとした表現。    おもしろいかししれない、捨てがたい味 <芽> ・膨らむアイデア……個性的なまとまり、全体像。スケッチ図、5W1Hを持つ短文。    おもしろそう、効果がありそう <花> ・固まるプラン………実施可能な具体的な提案。設計図、計算書、計画書。    詳細な費用見積もり、効果予測 <実>  強制拡散法は、基本的視点や選択的視点をメンバーに役割として分担させて、幼児退行的雰囲気の中で原ヒントを効 率的・遊戯的に便乗加工するグループ発想とした。  一視点専門に拡散思考を試みるので、慣れない人でも疲れない。職場でも広く実用されるために「楽しくて、為にな る発想技法」を理想として、「発想の生産性」のほかに、「易しさ」「楽しさ」「遠慮なさ」などをできるだけ盛り込 むものである。これだけ単独で、品質・能率・納期・設備・人事・教育・厚生・安全等の問題解決過程で応用すること ができる。  アイデア化過程ではゲームのうちに本質と本質の結合や実用性と新奇性の「創合」が楽しくできる。  シーズアツプ・ニーズダウン法は、左脳中心の理論的・集中思考が主となり、日頃の知識・経験が発揮される。これ は一般的な方案選択の際にも採用される。 2.技法の展開 グルーブ発想  本法は原則的には1班5〜6人のグルーブ単位で行なわれる。小集団活動等では宿題・会合を組み合わせたり、ステ ップ毎に分割したりして職場実状にあわせながら気楽に用いることができる。新商品開発等のように高い完成度を求め る場合はできるだけ集中的・連続的に、出来れば宿泊形式で行なわれることが望ましい。少々のアルコールがあれぱ最 高である。  また、ヒント・アイデアの段階と、ブランの段階で発想メンバーを入れ替えてイメージ思考と理論思考の特性を強調 することもできる。 対象者  専門技術スタッフ、小集団活動グループ、管理監督者、セールスマン、女子事務員新入社員と広範に及び、さらにこ れら各層・各分野の人達の混成により思わぬ異種結合が期待される。……わいわい和やかに、騒々しい創造しい発想グ ループ…… ・違いの大きいもの同士のほうが面白い……異質結合するもの同士も発想者同士も… ・同質部より異質部を大切にする創造集団……新人ギャル+熟練事務員+管理職オジン ・最大公約数より最小公倍数のほうが大きい……凝縮した異質馴化より拡散した馴質異化 ――<イラスト>―― (1) テーマ・イメージ図  テーマに関する各自の情報(直観的印象・学習知識・実際体験・個人的願望、既存頬似例など)を思い付くままに、 1件1葉で白色の名刺大のカードに横書きする。書き終わったら裏にして回収、よく混ぜて読み上げる。読まれたカー ドは手分けをして、模造紙上にその内容により大雑把に分類して寄せ書き風に貼り付ける。  類似カードは近くに置くが決して重ねない(類似の中の備差を犬切にするためと隠されたカードの書き手の悲しさを なくす貯め)。またKJ法のようにカード群を囲む境界線や連関図のようにカード間の関係線は引かない(データを雑 然とさせたままとして、脳に既に整理されたかのような安心感を与えずに気掛り状態のままで、以隆のコラージユ発想 を促すため)。新商品開発等では、希望点・欠点別、5W1H別、目的・条件・類似例などのマトリックスの中に貼り付 けることもできる。  この過程で各カードの中心語(中核的な意味を表す語群)に黄色か青色のマーキングをする。また各自が大事だと思 ったり、何となく気になるカードがあればその都度自分で見覚えマーク(☆や※)を付けておくと、後に一目見ただけ ですぐにその内容を思い出せる。 想定されるイメージカードの例 (テーマが「メガネ」の場合) ・食事や入浴の時、湯気で曇る ・近視用、遠視用、乱視用などがある。サングラスもある ・レンズが二枚あって弦で耳にかける ・遠近両用もある(凸レンズ・凹レンズ)(境のない物もある) ・鼻メガネもある。(鎖付き) ・仮装用メガネもある(紙で作ったものも) ・メガネにもファツションがある ・縁のあるものとない物 (ダンディー、オシャレ) ・老眼鏡は掛けたり外したり面倒 ・レンズの大きいものや小さいもの ・色眼鏡で夜、通転すると危ない (事故の例がある) ・鼻の上に跡がつく(耳にも跡が付く) ・跳んだり跳ねたりすると外れて落ちる…スポーツには不便 ・レンズが傷ついたり、割れたりする ・眼鏡探すのが大変(コントのネタ) ・レンズの汚れは布で拭き取る ・メガネの代わりにコンタクト・レンズがある ・サルにメガネを掛けさせたらメガネ猿?(蚤取り用メガネ)………………<無意識発想の紛れ込み> ・溶接用メガネやX線防止用メガネ ・赤外線メガネでは夜でも見える ・レンズの縁に飾り付け ・額の上にかけるのはオシャレ ・ダテ眼鏡はレンズ無しか素通しレンズ ・神様や仏様は眼鏡をかけていない(先生は色眼鏡をかけてる) ・かけるとよく見える (昔は不便だったろう) ・望遠鏡や顕微鏡のなかま ・女優は余り眼鏡をかけないようだ(見た目が悪くなるから) 目標値の設定  全員でテーマ情報を掴んだ後に解決の方向・水準・期限などを申し合わせ、確認する。既にそれらが所与の条件とな っていて極めて困難と思われる場合は、目標値を分割してメンバーの抱く恐怖惑・無能力感を興味・好奇心レベルに引 き下げるほうが一般には有効であろう。  できればこの段階で、リラツクス体操、簡単な瞑想、過去の成功体験患起、発想成功の自己暗示等を全員で行なう。 (2)ビントカード イメージング  大量に用意された名刺大のイメージ・カ一ド(無い場合は手近の週刊誌・カタログ・パンフレット等のカラー写真の ページをデタラメに開いて代用)を任意に10枚程度抜き取り、1枚ずつゆっくりと楽しむ。気の向かない絵柄や馴染 みのないものならパスして次の絵を見る。不足したら絵は何枚でも補充できる。  とにかく絵を見さえすれば脳内に自ら認知・理解・推測・連想等の反応が起こる。それらのうち言語化できるもの全 てがイメージであり、類比のタネとして用いられる。(馴れたら言語化不能のものも使える)。このイメージは人によ り、その時の精神状態により実に様々な展開をする。実験によればその産出量は、初心者で1分間に20から30くら いである。 イメージカード・サンプル イメージング3カン2想法 〔3カン〕 (1)「観賞」して得られる感性的イメージ…眺めている時に感じる感覚・情緒・フィーリン   グ・印象等の表現(例…リンゴの絵→つややか、おいしそう、痛みやすい…) (2)「観察」して得られる理性的イメージ…見つめて思い浮かぶ知識・経験などの説明。   (例…リンゴの絵→固い皮、芯、津軽地方…)、 (3)「感心」させられる直観的イメージ…考えられる本質・存在意義・成立原理・成功条件   等の推測(例…リンゴの絵→厳しい寒さに耐えてこその旨味、色付けは太陽光線次第)  「観賞」からは個性的、「観察」からは科学的、「感心」からは本質的なイメージが出易い。「感心」は馴れないう ちは難しいだろうからあまり根を詰めなくてもよいが、高級ヒントへの入口ではある。 〔2想〕  これらの絵からの直想的イメージ語のほかに、これらからの連想、連連想…される感性的・理性的・直観的なものも 有力なタネである。これらの連想系のイメージ語はかなり個性的であるため、得られるヒントもユニークなものが多い。 イメージのまとめ   ・写真を見て考え込むのではなく、思い浮かべるのであり、“遊想”のつもりで…… ・言語化できるものなら、感性的なものでも理性的なものでも何でもよい。 ・イメージには正しい・正しくない、うまい・へた…はない。個性的なものほどよい。 ・連想やお話作りによるイメージのほうが個性的で面白いものが得られる。 ・3カン法を使うと、1枚のイメージカードから楽に多くのイメージが得られる。 * イメージのココロが得られると、ヒントの質が高まる。 類比によるヒントづくり  画像によるイメージ(A1‐n)とテーマ(B)との間で類比、すなわち「なぞらえる結合」を試みる。Aの状態・ 動作が××であるようにBのそれらも××ならばどうだろうか?という問い掛けを続けていく。この類比結合を類型化 すると次の4タイプとなろう。 @「全部結合」=AそのものをBに結合させる (例:ラジオ+カセットレコーダー=ラジカセ) A「部分結合」=Aの一部をBの全部に直結、AとBの一部を交換する (例;アボガド→海苔巻きの干瓢=カリフォルニア巻き) B「特性結合」=Aのもつ特性をBのそれらと交換するか、新たに付加する (例;パブレストランの雰囲気→縄暖簾の飲み屋=新居酒屋) C「擬人結合」=もし自分がAかBであったら、B、Aに対してどう思うかと想像する (例;肉や魚より寒がりの野菜→冷蔵庫=パーシャル冷蔵庫) * 「モノの発明」には全部結合、部分結合が多く見られ、「コトの解決」には特性結合が多く見られる。  画像類比に入る前に既に脳の中には、テーマについての顕在的・潜在的問題意識が出番を待ってそわそわしていること が多い。この出番欲求がつよいとAからBを類比してヒントを求める働きよりも、Bについての類比ヒントを可能にする Aを捜す働きのほうが優位となり、無意識に都合のよいイメージをこじ付け気味に作り上げる傾向がみられる。これはこ れで一向に構わないし、むしろ奨励される。出たがり屋がすべて出払った後(脳が無心に画像類比を楽しめる状態)初め て本人が思ってもみなかった異種結合が生まれてくる。  ヒント多産のコツは「愚案」を楽しむことである。面白がり気分・遊び心・野次馬根性で結果には一切とらわれずに 「遊想」するとよい。「実現化できそうかどうか」は全く考えず「できるとしたら面白そう」がよい。いや、それほどの 感触もないほどの「面白いかもしれない」という程度のものを思い付いたらすぐに、白色の名刺大のカードに1件1葉・ 2〜3行で横書きする。どうしてもヒントが出てこない場合(無意識に名案狙いの状態になっている)はともかくイメー ジとテーマを直結(例…リンゴのような灰皿、痛み易い自動車、固い皮のある朝礼…)させてカード化する。後は安心し た脳がやってくれる。(発想例1・2参照) 画像類比発想の例〜1……テーマ「新しい懐中電灯」……モノの工夫 絵  (画像のイメージ) ⇒ (思い浮かぶビント)   ・きれいな模様 ⇒ デザインを美しくして壁掛の装飾 ・すぐに目につく派手な色 ⇒ 小型発光ダイオード(暗闇でも分かる) ・長い触角 ⇒ 捲取式のゴム紐の輸で頭などに固定式 ・細い足 ⇒ 折畳式の針金製の足で置いたり掛けたり ・花の蜜を吸う(栄養) ⇒ 普段は太陽光線で充電(ソーラー電池) ・ぷわぷわと舞う ⇒ 徹底的に小型軽量化 ・蜘蛛の巣にかかる ⇒ ボタンやポケットに掛けられる ・花の上 ⇒ (鼻の上)眼鏡に取り付けられる 水割り ・冷たい→温かい ⇒ 温かな手触りのする材質 ・濃さを好きに調節 ⇒ レンズをネジで移動して、焦点を調節 ・ガラスのタンブラー ⇒ 円筒形でないデザインは?   →中が見える →バツデリー残貫が簡単に分かる ・酔う→おしゃべり ⇒ 口笛を吹くと反応して音を出す ・時間がたつと水っぽい ⇒ ゴムでシールして水に強くする ・氷→透明→無色 ⇒ フィルタ一の取り替えでカラー光線       (劇場での応援…一人文字も書ける) テニス  ・スポーツ→汗→塩分 ⇒ 夜釣りの時、塩分で錆びない ・ギヤルに人気 ⇒ ファンシー、ファツショナブルデザイン ・ボール→弾む(弾性) ⇒ 落としても壊れない     →スペア ⇒ 予備の電池入り ・声援→大声 ⇒ボタンを押すとブザーが鳴る(痴漠対策用) ・コートの白線 ⇒ 配線切り替えで明るさと寿命が変わる (シング/ダブルス)  (パラレル配線とシリーズ配線の切り替え) ・ショート・ス力一ト ⇒ 小型化→超小型化→ブローチの宝石の裏側に取リ付ける   →全体が浮き出して見える 画像類比発想の例〜2……テーマ「資材倉庫の整理整頓」……コトの解決 絵  (画像のイメージ) ⇒ (思い浮かぶビント) 地球儀  ・丸い→四角い ⇒ 倉庫内の縦横上下を四角に区画 ・ぐるぐるまわる ⇒ 小物類はターン・ボックスに入れる ・傾いている ⇒ 立て掛ける長物には枠木か鎖を ・傾いている ⇒ 棚板は少し奥を下げ手前に落ちぬように ・赤道→仕切り線 ⇒ 境界はペンキではっきりさせる ・南北 ⇒ 南の窓の前には物を置かない(日光) ・高い台 ⇒ 踏み台を置く ・海外旅行→ヤング ⇒ 若い連中の意見を尊重する ・ハワイ→夏→暑い ⇒ 窓が開くように手入れをする(風通し) サッカー ・足だけ→手を使わない     ⇒ 両手が塞がっていても釦を押せば開く扉   ・グランドは広い ⇒ 通路・足元は思い切り広く ・大人も子供もできる ⇒ 背の低い人のことも考えて置く ・キーパー→番人 ⇒ 倉庫番がいなくても分かる在庫一覧表 ・走る→疲れる    ⇒ 出し入れで疲れないよう、重い物は下に ・グラウンドの整地 ⇒ 毎月一回皆で徹底的に整理整頓 ・ジヤージのマーク ⇒ 品物の名札を棚に掛けておく ・夢中→転んで捻挫 ⇒ 油缶の下にはオイルパンを敷く ・フワードやバックス→役割 ⇒ 当番を決めて毎遇点検 電話機 ・声が聞こえる ⇒ 扉を開けるとテープが回って4Sを促す ・情報を知らせる ⇒ 資材入庫状況を使う人に知らせる ・外して使い、後で戻す ⇒ 違う所には戻せないように(型決めする) ・外して使い、後で戻す ⇒ 棚札を裏返し、戻したときに表に返す ・電話番号 ⇒ 番号を品物と置場に着ける ・相手が見えない ⇒ 人が見てないと手抜き→鏡を取り付ける ・グルグル巻きのコード ⇒ ケーブルやコードの巻き方を決めておく ・時々混線 ⇒ 新人や他職場の人にも分かるような標識 ・公衆電話→l0円→お金 ⇒ 4Sコンクールの賞金で一杯飲もう! 台紙貼り  書き終ったら裏にして集める。(自分の分量が少ないと思ったら適当に白紙を混入しておけばよい。妙な劣等感は後障 害となる) (1) 回収したヒントカードはテーマイメージ図づくりと同様に読み上げ、中心語にマーキングして、模造紙上に大雑把   に分類して寄せ書き風(コラージュ発想のため)に張り付ける。このとき後の役割カード貼り足しを考慮してカード   間隔を空けておく。   この過程で自他のカードを問わずに、ヒントの内容が直観的に「ユニークだな(Unique)」と思ったら「U」、効果   がありそうだな(Effective)」と思ったら「E」と各自が叫ぶ。言った人の数だけ「∪」「E」のマークを右肩に   朱記する。発想メンバーの価値観のバラツキを示す指標となる。 ――<イラスト2枚>―― (2) 別の方法として、一枚ずつ全員で「U」の程度、「E」の程度を各3段階で評価して摸造紙のマトリックスに張り   付ける方法もある。 (ヨコ軸=∪0、Ul、U2:タテ軸=E0、El、E2)高度の「U」、「E」を求める新   商品開発にはこちらのほうが適していよう。 (3) 役割カード 役割による拡散思考  画像類比法で得られたヒントは断片的・漢然的なものが多い(特にU型)。また無意識に固定観念にとらわれて発想の 飛躍の足りないものもある(特にE型)。これらの原案はもう少し補足・発展させておきたい。  一方、発想には御法度として封じられている「ケチツケ欲求」の吐け口を作っておかないと、その欲求が変な形で現わ れたり、鬱積して自分の発想の足かせとなり易い。 そこで、有効な便乗加工をするための視点(天才なら一人で瞬間にできる)をメンバーそれぞれが思考方向の役割として 分担してヒント・カ一ドの見直しをする。  着想したら黄色カードに記入(大臣No.付記しておくと後に発想回顧する時に便利)して、原カードの隣に上向きに置 く。他人のヒント・カ一ドを見た時に心のうちに湧いたケチツケ欲求が便乗加工を示唆してくれることもある。  役割大臣は主務を示すものであって、自発的兼務は奨励されているので、どんな手直しもできる。「役儀なれば御免」 と相手に遠慮なしにできるし、相手も役割だからしょうがないと割り切ってくれる。互いに心にわだかまりが残らない。 終ったら全員で役割カードを読み上げ、中心語にマーキングし、「U」「E」評価をして模造紙に貼り付ける。 <役目による発言>  本法では「私の本心はそうではないが、役目によりやむを得ずこんなことを言うのだ」という顔で、こだわらずに書き 易いし、言い易い。  自案(他人は誰の案か知らない)に便乗加工(書いた本人にはケチつけとも思える)されても「それは彼の役目だから …」と許容的になり、心のしこりとして残らない。 <ケチ・批判> ケチ・批判は言いたいものである。(たとえ、形を変えても)それが言えないと、そのことがこだわりとなって、発想が 楽しく、自由にはばたけない。(大様の耳はロバの耳)  どんな言われ方でも、言われた人は不快になる。反論できなければなおさらである。(特に原案者が自分であることが 他の人に分かる場合はなおさら) 標準的役割構成 @「たとえば大臣(例示)」 原案の基本的性格を尊重しながら具体化・補足して肉付けや色付けをする役割である。 〔5WlHや5Mを手掛かりにするのもよい] (例)色盲でも交通信号が分かる眼鏡⇒赤色光のみ増幅し、チラチラ微震動する眼鏡 A「にたもの大臣(類似)」 原案の狙いに類似・近接した見方である部分や特性をかえてみる役割である。〔空間的 ・時間的、機能的・因果的見方を巡らしてみる] (例)シート・ベルトをしないと警告音⇒ベルトをしないと工ンジンが掛からない ※@Aは∪力一ドに効果的である。(異質馴化) B「あべこべ大臣(反対)」 原案の狙いと逆方向で対象や状態・動作特性などを考えてみる役割である。 〔部分・全体を逆転したり、短所の長所化を考える〕 (例)会議の遅刻者に罰金を課す⇒遅刻者はそれだけ忙しいのだから、労いにジュース C「わるのり大臣(極端)」 原案の狙いの方向を更に進め諸特性を極限化・超極限化して異質効用を探る役割である。 [意識的に脱常識・反道徳的までに飛躍する] (例)たまには屋外に出ての職場会合⇒いっそ雨の中、傘を差してする(早く終る) ※BCはEカードに効果的である。(馴質異化) 大臣任命・職務執行  大臣の任命は次の順が望ましい。(a)希望者(自分の性格と反対がよい)(b)ジャンケン(勝った者から選ぶ、逆は不 可)(c)トランプ(または大臣名記入のカ一ド)。  誰もが臨時閣議を求め、相談することができる。本務を遂行すれば、無断で好きな大臣を兼任することもできる。一渡 りして「役割カード」の出方が不十分なら第二次内閣を組閣してもよい。 選択的型役割 <テーマや開発方向によって…> @「やりとり大臣(添削)」 ある要素を付加したり、削除して別な姿を求める。 A「ひねくれ大臣(交換)」 ある要素を変形したり、他と取替えて違うものをつくる。 B「にくづけ大臣(補填)」 原案が触れていない側面を補足・追加して充実化する。 C「おおげさ大臣(微差)」 類似ヒント間の微差中の意味を拡大し別展開を図る。 D「みがわり大臣(擬人)」 自分がそのものか、関係者ならどう思うかと見直しをする。 E「いいかえ大臣(本質)」 要点・本質から「要するにどうすることか」の目から別案を探す。 モノの改善型役割 <現状の獲得性について…> @「よくばり大臣(増強)」 もっと重・厚・長・大・高・多・精・密・濃・速…にしたら? A「ひかえめ大臣(削減)」 もっと軽・薄・短・小・低・少・粗・疎・淡・遅…にしたら? B「ひねくり大臣(変造)」 少しずつ変化させたら?位置・部品・順序等を入れ替えたら? C「とりこみ大臣(導入)」 他のモノ・特性・アイデアを取り入れたり、組み合わせたら? D「いじわる大臣(逆転)」 反対にしてみたら?短所も長所にならないか? E「よこみち大臣(転換)」 従来の対象・用途・効用を別のものにしてみたら? コトの改善型役割 <足りない人・金・物・情報・技術・時間等について…> @「まともな大臣(正統)」  長所を増やすには、短所を減らすには!不足の条件は? A「ひねくれ大臣(斜視)」  条件が悪化したら、条件を変えたら、縄文人なら? B「そもそも大臣(本質)」  量か質か、枝か幹か、一時か永久か、ホンネかタテマ工か? 原因分析型役割 <一次分析で得られたものについて…> @「わからん大臣(解明)」意味不明・抽象的・関係があいまいなものを解明する。 A「そのまた大臣(深耕)」そのまた原因は?そのまたまた原因はと,しつこく掘り下げる。 B「にたもの大臣(類似)」それが原因でありうるなら,似てるこれも原因でありうるかも。 C「いじわる大臣(逆転)」それが原因なら、反対のこれは原因とならないかチエックする。 D「うたぐり大臣(懐疑)」これは原因でないかもしれない。すると真犯人は? E「りくつや大臣(論理)」それぞれの原因同士の関係はAND条件かOR条件か? 危険予知方役割 <KYシートや現物をみながら…> @「人がもし大臣(ヒト)」人がもしOOの状態だったり,OO行動をしたらこんな危険が。 A「物がもし大臣(モノ)」物がもしOOの状態だったり,OOの動作をしたらこんな危険が。 B「千里眼大臣(透視)」今は見えない人や物がもしOOの状態やOOの動作をしたら危険。 C「人殺し大臣(悪魔)」労災に見せかけて人を殺傷しようとする悪魔はどんな手を使うか? 役割発想法の応用例 @ モノの改善    現状の各特性について よくばり大臣 もっと重・厚・長・大・高・多・精・密・濃・速…にしたら? ひかえめ大臣 もっと軽・薄・短・小・低・少・粗・疎・淡・遅…にしたら? ひねくり大臣 少しずつ変化させたら?位置・部品・順序などを入れ替えたら? とりこみ大臣 他のモノ・特性・アイデアを取り入れたり、組み合わせたら? いじわる大臣 反対にしてみたら? 短所も長所にならないか? よこみち大臣 従来の対象・用途・効用を別のものにしてみたら? A コトの改善   足りない人・金・物・情報・技術・時間などについて まともな大臣 ○○を少しでも増やすには? 何倍にも増やすには? ○○が現状のままで目的を達成するにはどんな条件が必要か? ○○が少なくてもよい場合の条件を増やすには? ひねくれ大臣 ○○がもっと少なくなったら? ○○がなくなったら? ○○が少なくなった分、増える××を利用できないか? ○○がもっと足りない他者・他国・昔はどうだったか? そもそも大臣 ○○の問題は量か質か? 枝葉か根幹か? 一時的か永久か? ホンネかタテマエか? 本当に今解決する必要があるか? B 原因分析    一次分析で得られたものについて わからん大臣 意味不明・抽象的・関係があいまいなものを解明する。 そのまた大臣 そのまた原因は?そのまたまた原因はと、しつこく掘り下げる。 にたもの大臣 それが原因であり得るなら、似ているこれも原因であり得るかも。 いじわる大臣 それが原因なら、反対のこれは原因とならないかチエックする。 うたぐり大臣 これは原因でないかもしれない。すると真犯人は? りくつや大臣 それぞれの原因同士の関係はAND条件かOR条件か? C 危険予知    KYシートや現物をみながら 人がもし大臣 人がもし○○の状態だったり、○○の行動をしたらこんな危険が… 物がもし大臣 物がもし○○の状態だったり、○○の動作をしたらこんな危険が… 千里眼大臣 今は見えない人や物がもし○○の状態や○○の動作をしたら危険… 人殺し大臣 労災に見せかけて人を殺傷しようとする悪魔はどんな手を使うか… (4) アイデア・カード ∪・E検討  Uマークのどこが、なぜ、どれほどにユニークなのか、Eマークはだれにとって、どんな場合に、どれほどの効果があ るのかについて話し合う。この結果U、Eが増減する。それぞれ既存の類似例の着眼点や成功条件と比較してみる。でき れば無印やU0、E0カードについてアイデアの再発掘をする。 集団見合い  ヒント段階ですぐに使えそうなものは少ない。そこで折角の個々の狙いの面白さを相互結合によって育てようというも のである。なんとか育て上げたい白や黄色のヒント・カードを各自1〜3枚を分担して、自らがそのカードになりきって、 相性の良い結婚相手のカードを直感や連想によって探す。体と体の結び付き、(形態的結合)よりもココロとココロのつ ながり合い(本質的結合)のほうが一般に良い子供が生まれる。  求める名案(U・E)はU×E、U×∪、E×Eから出るか、案外無印やU0、E0が結婚して名を上げるか一概にいえ ないのが面白い。 (例) 夫;「一年を通じて着られる下着」…夏は通気、冬は保温 妻;「水に濡れると柄が変わる形状記憶合金糸の刺繍」…温度で形状が変わる 子;「肌の温度か湿度で形状体積が変わる繊維で作る下着」 子供が生まれたら桃色カードに記入し、後に全員でU、E評価をする。 肉付け  U、Eの度合いの高いものから、モノなら効果や各機能特性について、コトなら効果や諸条件(5WlH)についての チェツクリストに照らして洩れを補い、全体感のあるアイデアにまとめ上げる。 ――<イラスト>――    (5)効果機能接近 現実との妥協  こうして得られたアイデアは、一般にユニークなものが多い。ということは潜在二―ズに対応したり、それを発掘する ことはできても、今までに実現されていないことから「現実化手段」に技術的・経済的問題があることが多い。といって、 ここでミスミス引き下がる手はない。方法は二つある。一つはその問題点を発想テーマとしてのヒント、アイデア探求の 旅に戻ることである(高完成度を求める新商品開発など)。もう一つは現実と自主的に妥協して早期実現を図り、小さな 成功→小さな自信のサイクルを繰り返していくことである(短期活動の多い小集団活動など)。この効果機能接近は後者 に対するものである。  個々の機能について技術的問題点(現代社会または自社の科学・技術的水準との差)および費用的問題点(固定費・変 動費・時間費・空問費など)についてのチェックリストによって○、△、×の評価をする。ここでOKなら問題なくプラン 過程に行ける。全機能OKは大名案か大陳腐案であることが多い。 効果機能分析  アイデアの命はその効果(UとEによる効用;新しく作られた価値)にあるのは当然であり、その効果がテーマ(二― ズ)に対して十分条件を満たしていることである。その効果はアイデアによって規定されたいくつかの機能(新しい使わ れ方をする働き;材質・寸法・構造・体裁・方法など)を必要条件としている。  まず総効果を単位効果に分解して、各々の構成比を推定する。次に単位効果ごとに関係する機能を系統的に展開して、 各々の寄与度を推定する。[いずれも衆目一致法による直観的な粗いパーセント表示で可] シーズアップ  △、×の評価を受けたものについて、その目的(単位効果創出)に対して絶対固有であるか、他に代替が考えられるか を検討する。ここでは既存の類似例がかなり参考になる。一般に代替案を採用するとその結果としての効果は目減りする ので、その分を推定する。全て代替案が得られ、かつ総効果の目減りが許容範囲ならプラン化に進む。 二一ズダウン  必要機能のシーズアツプで問題点が解決されない場合は、原アイデアが描いていた効果について融通の有無を検討する。 オーバー発想による過剰効果はよく見られるものである。効果が対象・時間・空間やその水準ついて少しづつ割引を考え てみる。効果の要求度を緩和すれば、それだけ必要機能の条件も緩和されて、実現化手段が得易くなる。ここで割り引い た効果とシーズアツプでの目減りの緩和分だけ原アイデアはレベルダウンするが、それでも実現化する値打ちがあればプ ランに移る。100点主義か60点主義かの選択である。〔効果レベルに割引きの余地のない場合に、この過程をパスし て実現化条件をテーマとした発想の旅に出直す〕効果機能接近による粗プランづくりの段階では、専門スタッフの参加を 得たり、別メンバーに検討することも考えられる。 3.まとめ 類比発想の体得  本法は職場で手軽に実用できるものではあるが、発想するのはあくまでも昨日までの各メンバーの頭脳である。1〜2 回で直ちに大名案が生まれる幸運は稀である。5〜6回試みてほしい。画像類比法や強制拡散法は習熟することにより、 イメージ・カードを離れて見たもの聞いたもの、さらには考えたことから奔放な類比発想をしたり、一人で瞬間的に多視 点からの役割発想をすることができるようになる。問題解決欲求と関連情報さえあれば、テレビをみている時、新聞・雑 誌をよんでいる時、食事をしている時、人と話をしている時、空想を楽しんでいる時…ピカッとくるものが多くなる。 応用範囲  本法は開発後、多くの企業研修や公開研修で普及されてきた。それらの各種研修会の実績からの推定では、本法の適用 範囲は濃淡はあろうものの「職場の創造的問題解決」の各方面においてそれなりの成果をもたらすものと思われる。 ☆モノの発明…一新商品開発、新設備構想など(What型) ☆コトの解決…一新用途発見、日常的諸管理・活動の新案など(How-to型) ☆コトバの創造一部下説得、顧客説明、商品惹句などでの新表現(My Word)  今日もリンゴは落ちている! 市場急変の現在、「どのように作ればよいか?」でなく、「なにを作ればよいのか?」 が経営戦略の中心課題である。本法のような開発目標探索型の発想技法に対する二一ズは少なくはないと思われる。リン ゴが落ちても、イモが転がっても、コオロギが鳴いても一見馴れた情景が職場の問題解決のための素晴らしいヒントをも たらしてくれる。創造的人生は楽しいもので、創造的職場は生き生きとしている。 アップル法でのヒント作例 1.口笛を吹くとブザーが鳴る懐中電灯………・暗闇でも探せる 2.水壷付き灰皿…………………………………・吸殻がいぶらない、防火 3.レストランで待時間に合わせた砂時計……・客がいらいらしない 4.日焼け跡のつかない水着の紐………………・紫外線を通す繊維 5.色盲でも交通信号が分かるメガネ…………・特定波長を増幅する極細線 6.体温で通気量が調節される肌着……………・温度で体積が変わる繊推 7.たまには役員会議室でQC会合……………・各役員の立場で発想 8.ネジを回すと度が変わるメガネ……………・樹脂性レンズの中の液体変質 9.昼休みには全員運動靴にはきかえる………・自然なスポーツ奨励策 10.女性事務員による安全パトロール…………・新鮮な目、女性の啓発

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